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住宅リフォーム専門家が「自宅のワークスペースと働き方について考えてみた

はじめに

政府による「働き方改革」推進をきっかけに話題となった「テレワーク」。会社に通勤し、就業時間内は社内で勤務する、今まで一般的だった勤務体系から、もっと勤務する場所や時間に対する柔軟な働き方ができるように、というのが主たる目的です。

その働き方が急激に世間に浸透しだしたのは2020年からの新型コロナウィルスの影響であることは皆さんご存知の通りです。通勤や勤務中の「密」の状態を回避し、感染の拡大を抑制するための施作として、数多くの企業や団体が一斉に導入を始め、瞬く間に世間に浸透しました。

テレワークの問題点を考える

多くの民間企業がテレワークを導入してしばらく経過したところで、民間の調査会社などが行ったアンケートの結果が公開されています。そこから「テレワークの良い点」や「テレワークによる問題点」の両面が見えてくるのですが、今回は問題点をクローズアップします。

その理由は「テレワークの問題点には、働く場所となる自宅の環境が原因のものが多いため」です。住宅リフォームの専門家としては、テレワークを行う上での自宅環境の問題点を改善する方法を考えたいと思います。

自宅でテレワークを行う際に起こる問題点

在宅勤務における場所や設備に関する問題点としては

・家族の声や生活音などの音が気になる
・テーブルや椅子のサイズが作業に適していない
・テレビなど。仕事以外のことが目に入り気になる
・コンセントが足りない
・機材や資料を置くスペースがない
・部屋や手元が暗い
・リモート会議で、室内が背景に写り込むのが気になる。
・リモート会議で生活音を拾ってしまう。
・会議中の音声が漏れてしまう。

などの声が多いようです。どれも確かに起こり得そうな問題です。

自宅でプライベートとビジネスを両立させることの難しさ

これらの問題が起こるのは仕方のないこととも言えます。まず、個人の住宅は「生活の拠点」としての建物であるからです。新築の段階で「事務所や作業場を兼ねた家」として設計・建築をしている場合などを除けば、今回のようなテレワークを想定した仕事スペースがある家、臨時にスペースを確保できる家は少ないのかもしれません。実際に自宅で十分なテレワーク用のスペースを確保できている、という人の割合は3割程度とも言われています。

結果、多くの人はリビングのテーブルなどで作業することになります。オープンなスペースですから、当然家族やペットが視界に入ってきますし、生活音も聞こえてきます。ごく限られたスペースでは資料をアレコレと広げることもできず、部屋にあるテレビやゲーム、漫画などが誘惑してくることもあるでしょう。集中しようとしても中々しづらいのも頷けます。リモート会議などで、他の人に家の中を見られてしまうことに抵抗感を感じる人も少なくないでしょう。

テレワークが短期であれば何とか耐えることもできるのかもしれませんが、仮に常態化してしまうと、日々ストレスが増加し、体調面や労働生産性に悪影響を及ぼしてしまうことになるかもしれません。自宅というプライベートな生活空間でテレワークを行う場合、そのプライベートとビジネスのバランスをうまく取り、両立させるというのはなかなか難しいことなのだろうと考えさせられます。

生活空間の中に「小さなワークスペース」を作る

もし「仕事だから」と家族の生活行動に制限をかけるだけでは、その家族がストレスを感じるだけになります。また、家のどこかの部屋を大掛かりにリフォームして、仕事部屋を作るのも大変です。第一それなりのリフォーム予算が必要になりますし、工事には時間もかかります。

ではどうすれば、自宅で普段の暮らしも送れ、仕事もしやすい環境を得ることができるのでしょう。現実的に考えれば、プチリフォームレベルの「小さなワークスペース」を、生活空間の中に設けるのが一番ではないかと考えます。

前項で触れた通り、テレワークにおいてストレスを感じたり、生産性が上がらない要因は、「プライベートとビジネスの境界線がはっきりしないこと」です。

自宅に専用のワークスペースを作り、はっきりとオン(ビジネス)とオフ(プライベート)を切り替える環境づくりができるのが理想的であると思います。

とはいえ、どのようにワークスペースを作れるかは、お住まいのお家の部屋数や間取りによって大きく変わります。

そこで、テレワークのためのリフォームをケース別に提案してみたいと思います。簡易的で比較的お手軽価格のリフォームの手法をいくつかご紹介します。

その前に、ワークスペースを作る前に考えるべきポイントを洗ってみます。

テレワーク用に自宅を改造!そのポイントは?

では生活スペースをどのようにワークスペースに変えるのか?テレワーク用のワークスペース作る際に考えるべきポイントを挙げてみます。

1.どれくらいのスペースが必要なのか?

まず一番目に「テレワークのためにどれくらいのスペースが必要か」を見積りましょう。実際の作業スペースの他に、プリンターなどの設備を置く場所は?書類や資料を置く棚は必要か?などをイメージしてみるとよいでしょう。

2.必要なインフラは十分に使える場所か?

テレワークではインターネットに接続できる環境は必須です。パソコンやプリンター、スマホを使うための電源も必要です。ワークスペースにする場所はインターネットに接続できるか?または無線LANの電波はきちんと届くか?コンセントは何個くらい必要か?なども確認しましょう。

3.完全に独立した空間が良いのか、一部はオープンな空間がよいのか?

ワークスペースが完全に独立していなければならないのか。家事や育児の観点から一部はオープンな空間にしておいたほうが良いのか?一部をオープンにする場合はどの部分は許容できそうか?(例:多少、家族の姿が目に入るのは我慢できる…など)考えておきましょう。手を加える範囲や規模はそれにより大幅に変わります。

4.仮にテレワークが終わった後のスペースの使い道はあるか?

新型コロナウイルスの状況次第でテレワークはなくなるか?あるいは今後もテレワークが継続するか?仮にテレワークが終わったときに備えて可変性を持たせておく必要があるのかどうかも考えておくべきポイントと言えるでしょう。

テレワーク用のワーキングスペース作りのアイデア

具体的にテレワーク用のワークスペースを作るためのアイデアを考えてみたいと思います。住宅リフォームに携わる者として、簡単に無理なく出来るリフォームの手法を提案します。

単純にスペースを区切る

もし仮に自宅に個室がない場合や、個室はあるが事情によりスペースが作れない場合は、「今あるスペースを区切る」ことで仕事に集中するための領域とプライベートでリラックスできる領域を分けることもできます。

リビングや寝室などの家族の共有スペースでも、部屋の一部を区切れば物理的にも心理的にも独立した領域を確保することが可能です。壁を設けるような本格的な仕切りのが難しい場合には、比較的安価、かつ簡単に設置できるパーティションやロールスクリーンなどを活用するのも良いと思いますし、背の高い家具や観葉植物など、生活の中で利用できるものを間仕切りとして活用する方法もあります。

自宅のスペースにピッタリと収まるデスクや収納がどうしても既製品にない場合は、オリジナルで設計したオーダーメイドの家具(造作家具)を作るという方法もあります。作業スペースにジャストサイズの家具があれば、無駄なスペースは生じません。素材やデザインにもこだわれるので、仕事のモチベーションにも好影響となるかもしれません。

造作家具を作る場合は費用と時間がかかりますが、テレワークを快適にし、生産性を高めたいとお考えの方は検討の価値があると思います。

家のデッドスペースを有効活用する

階段下や収納など、家の中にいわゆるデッドスペースがあるお家でしたら、そのスペースを有効活用するのも方法です。とりあえすパソコンを1台置ければ問題ない、という方であれば、作業用の机やカウンターを用意するだけで十分かもしれません。

また、リビングでも窓や扉の開閉のための空きスペースなどがあれば、そこもワークスペースとして活用できるかもしれません。将来的に撤去すれば、テレワーク終了後に元に復帰することも簡単ですし、お子様の学習スペースとして買う要するなど別の用途も考えることができます。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか?今回はテレワークとその問題点、小規模なリフォームによるワーキングスペースの作り方について考えてみました。

生活とビジネスの現状とこれからを考えますと、テレワークはもっと普及することになるかもしれませんし、どのような流れになったとしても、完全になくなることはないでしょう。

テレワーク・在宅勤務には記事で触れたような問題点が起こる場合があります。課題として「自宅におけるプライベートとビジネスの切り分け方」はついて回ることになるでしょう。

ちょっとの工夫や手間、予算で快適かつ能率的な自宅勤務の環境を整えることはこれからの時代にとって必須となるかもしれませんね。

私たちおうち工房では、規模の大小にかかわらず、お住まいのお家のリフォームに関するご相談を承っております。今回のように「テレワーク用の作業スペースを作りたい!」というお問い合わせも大歓迎です。まずはお気軽にご相談ください。